食物経口免疫療法3つのリスク!命の危険も厚生労働省も非推奨だって知ってた?

「食物経口免疫療法」とは家庭でも出来る、アレルゲンを”少しずつ”食べて治す治療法のことです。
ただし、医学的エビデンスが定かではなく、アレルゲンを口にすることによりアレルギー反応が出ることがあります。

一部医療機関では食物経口免疫療法の指導を行っているところもありますが、厚生労働省では以下のように治療法としては推奨しておりません。

食物アレルギーの原因となる食物を徐々に増量しながら食べさせて耐性を誘導する方法である「経口免疫療法」について、「食物アレルギーの診療の手引き2011」検討委員会は「現時点で一般診療として推奨しない」とした。

出典日本ハムグループWEBサイトより

2016年に配布された食物アレルギー診療ガイドライン2016でも、「OITを食物アレルギーの一般診療として推奨しない」と記載されており、当サイトとしてはオススメはできません。

まず知って!食物経口免疫療法3つのリスク

  1. 少しだけ食べてもアレルギー反応やアナフィラキシーショックは起きる
  2. 長期間続けたとしても、必ずしもアレルギー体質が治るとは限らない
  3. アレルゲンによって治療の難しさが異なる(特に牛乳は非常に難しい)

 

愛する自分の子どもの食物アレルギーを少しでも良くしたい――そういった気持は痛いほど理解できます。
できればアレルギーを気にすることなく、いろんなものを美味しく食べて欲しい、というのはすべての親御さんの願いでしょう。

そんな想いが強すぎて、独断で食物経口免疫療法を行ってしまうと上記のような問題が発生することがあります。

もちろん、重篤なアレルギー反応が起きれば死に至ることも!
だから安易な気持ちで食物経口免疫療法は行わず、どうしても子どものためにやってみたいという場合は専門の医療機関に指導してもらうこと。

そして、医師の言うことを必ず聞き、子どもに異変が生じた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

一部医療機関では「成功」の声も。ただし、リスクは伴います!

「小麦は8割以上が成功します。次いで卵。牛乳はやや難しい。食べられるようになるケースが多いですが、治療中に症状が強く出て、中止せざるを得ない場合もあります」

出典AERA:アレルギーの食べ物あえて食べる「経口免疫療法」 小麦は8割以上成功

厚生労働省は経口免疫療法を医療行為としては推奨していません。
しかし、現実は1部の医療機関や個人が経口免疫療法を実施し、その効果が出ていると言います。

上記引用記事のようにリスクを恐れず、経口免疫療法を続けた結果、効果がでるお子さんがいらっしゃるのも事実のようです。親としては、家庭でも実践しやすいし将来の子どものために……と、安易に治療をはじめたいところですが厚生労働省が「待った!」をかけるのには実はこんな理由があるんです。

経口免疫療法で死亡リスクも!経口免疫療法は考えた方が良い?

2017年、神奈川県立こども医療センターで行われていた牛乳アレルギーの急速経口免疫療法でアレルギー治療中の呼吸が停止し、低酸素脳症で治療中という痛ましい事故がおきてしまいました。

牛乳アレルギーの急速経口免疫療法で低酸素脳症

この事故により、日本アレルギー学会では緊急全国調査を実施し、その調査結果では神奈川県立こども医療センターも含めて18例も経口免疫療法中に重篤なアレルギー反応が出たお子さんがいらっしゃることが判明しました。

そう”治療”とは言え、経口免疫療法で命を失う危険性もあるのです。

だから絶対に「お金がかからないから~」という理由で、独学で学んだ経口免疫療法を行うのはお子さんのためにもやめてください。
最悪の場合、その治療がきっかけとなって命を落とす可能性だってあるのですから。

家庭の努力、母の愛だけではアレルギーを治すのは難しい現実

食物アレルギーがあることがお子さんの生活に支障をきたすのは事実でしょう。
仮にアレルギーがなくなるのであれば、それに越したことはありません。

しかし、アレルギーと上手く付き合うことで、お子さんの生活が楽になることがあります。

食物アレルギー研究会では「原因食物でも、症状が誘発されない“食べられる範囲”までは食べることが出来る」という必要最小限の原因食物の除去は医師の判断であれば出来ると述べており、実はアレルギーだから全くアレルゲンが食べられないわけではありません。

医師が定めた「食べられる範囲」――適量であれば、アレルギー対策のお子さんでも、アレルギー反応を誘発せずに食べたいものを食べられることがあります。
(もちろん、その範囲を超えたらアレルギー反応が出てしまいますが)

だから「うちの子はアレルギーだから、何も食べられない!」と悲観するのではなく、医師の適切な判断のもとお子さんの「食べられるもの」「食べられる量」を知り、お子さんの負担を減らしてあげるのが現時点での1番良い方法です。

食物経口免疫療法も治療の1種かもしれません。もし仮に食物経口免疫療法を試す場合は必ず医師の指導のもと行い、危険と思ったら必ず即時やめるようにする、これだけは守ってくださいね。